長きにわたり魔術師アグリッパ(ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパ・フォン・ネッテスハイム、1486-1535)の主著『オカルト哲学』全三書の続編(第四書)として広く世に受け入れられた「魔導書」の全訳。魔術実修の「鍵」として、さまざまに改編・翻案されつつ読みつがれた奇書を、初出とされるラテン語版(1559年版)からの原典訳によって紹介する。さらに、謎に包まれた魔術師の実像をめぐって、20世紀イタリア・オカルティズムの泰斗A.レギーニ(Arturo Reghini,1878-1946)によるアグリッパ伝を併録。数々の伝説の検証にはじまり、その生涯の実像、『オカルト哲学』で展開される魔術論の概要までを包括的かつ刺激的に論じたこの労作と、そもそも『オカルト哲学』全三書の要約という一面をもつ偽書との組み合わせによる、アグリッパの魔術世界へ分け入るための「杖」ともいうべき一書。図版多数。