通りすぎてゆく夢から覚めたあとにはきまって、母から離れ、うまれてはじめてひとりで歩いた朝の小道を思いだします。つもったばかりの粉ゆきのうえにはちいさな生きものの足跡。小鳥、野兎、栗鼠、子狐。(「ひとりあるき」)みずからの居場所などはじめからもたずにてん、てん、と、かりそめの読点のように、非情な月日を通りぬけてゆくために。祈りのような歩行。5年ぶりの新詩集。組版・装幀=片桐寿子、装画=サカモトセイジ