心臓を引きずり回されながら、少女らの旅を見届けた今、ただ茫然と満ち足りている。
――村山由佳(作家)
秘密と嘘と危険のなかで育まれる、友情と愛の確かさに心を掴まれました。
――瀧井朝世(ライター)
日本が支配するかの地で出会った二人。
何もかも違う。でもあなたを知りたい。
1936年、日本植民地下の朝鮮。
日本育ちの翠、朝鮮育ちのハナ。
時代にもがき、駆け抜けていった少女たち――。
「ひとは、民族や、仕事や、性別に関係なく、愛に生きることができる?
ほんとうに自由になれるものですか?」(本文より)
戦前の東京、下町の娼婦街で育った翠は、
縁あってかりそめの「お嬢さま」として、日本統治下の京城で念願の女学生になった。
日本人家庭の下宿には、同い年の子守の朝鮮人少女(ハナ)がいたが、
言葉も通じず全然打ちとけない。
しかし、翠は少女がこっそり日本語の本を少読んでいる姿を目撃する――。
不自由に囲まれた切なくも美しい青春物語。