全国の博物館に収蔵・展示されている民具は、なんの変哲のないものでも、その使い手の生活や文化を後世に伝える貴重なモノである。だが現在、博物館の経営難や資料の膨大さから破棄されるものも増加しており、民具資料の存在意義が問い直されている。
民具はそもそもなぜ集まった・集められたのか。本書はこの問いを、能登半島とフィリピンのイフガオ州でのコレクターの活動の事例から明らかにする。そして、生活の中での物と人との関係性や、人が過去の物をどう捉えるのかを踏まえての資料保存のあり方を「緩やかな保存」として提示する。