花々は咲き乱れ、鳥たちがいのちを歓び歌っている。四季豊かな田園に稲穂が実る。
この美しい日本を、迫り来るとも言われている東アジアの戦場にすることなく引き継ぎたい。人を疑うことを知らず思いっきり走り回る子どもたちの真っすぐな夢をかなえたい。希望を胸に、健全な文化の花を咲かせよう。それは可能なはずだ。
今、世界も日本も歴史的な大転換期の真っ最中だ。
まさかと思うガザやウクライナの戦争が続いている。子どもも女性も兵士も無雑作に死んでゆく毎日という現実。人類は永遠に戦争を止められないのか。富と所得の格差は史上最大を更新するばかり。人間の自律性を奪いかねないAIの脅威。地球の暑熱化と生物多様性の維持も絶望に向かっている。
私たちは、世界第三位の軍事大国になることを目指している。世界では異例な実質賃金の減少、ゼロ同然の銀行利子。社会保障とインフラの整備に充てる資金を減らし、社会保険料を含めて増税、アメリカにぶら下がって軍事対決まっしぐらに進む道でいいのだろうか。政治も経済も社会もタガが外れてきた。
本書は、戦前に生まれてからの80年の波乱万丈の生涯を綴ることによって、確かなもの=肉体的な生命と「人間の尊厳」を包み込んだ概念としての「いのち」を中心に、「日本国憲法」のパワーを徹底的に追求した物語である。